勃起と射精の仕組み(メカニズム)は別物
男性器(陰茎、ペニス)の勃起と射精の体内の仕組みは全くの別物です。
射精とは、精子を含んだ精液を対外に射出する現象です。
基本的に射精は一種の反射現象ですが、勃起現象をつかさどる神経系とは異なる、独立した経路で引き起こされます。
簡単に言うと、射精は陰茎が刺激から発した信号が脊髄の射精中枢を通じて前立腺や精嚢といった精路(精液の通る道)などに伝えられることで起きます。
もちろん、普通は勃起と射精はペアのような現象ですが、射精は勃起とは異なるメカニズムによって起こるため、たとえ、勃起しても射精しなかったり、反対に勃起していないのに射精することもあります。
射精は、自律神経・体性神経・内分泌系の協力のもと、おおよそ、次のメカニズムで起こります。
- 精嚢で生産された精液が、後部尿道に排出されます。
- 膀胱頸部の閉鎖が起こります。
- 後部尿道に排出された精液が、律動的に体外へと射出されます。
SEXにおける射精
パートナーとのセックスで射精する時には、通常は陰茎が勃起した状態です。
性的な興奮が高まると、陰茎内の陰茎海綿体と尿道海綿体の内部にある動脈がゆるみ、海綿体の細かい溝のなかに多量の血液が流れ込みます。そのため、海綿体はふくらみ、海綿体を外側から包んでいる白膜が、血液の圧力を受けて硬くなります(この状態が勃起です)。
勃起した男性器(陰茎)をパートナーに挿入し、ピストン運動等によって、陰茎(ペニス)の末梢神経が、触感(摩擦による刺激)や温冷感(膣内のぬくもりや湿り気)をキャッチし、その快感を大脳に伝えます。
射精に関与している重要な臓器に前立腺があります。膀胱のすぐ下にあって、中央を尿道が通っています。
この前立腺の中央を通っている尿道に、射精前の精液が充満することになります。
性的な快感や興奮が最高潮に達すると、大脳から腰部の射精中枢に伝わって、射精に関与する多くの末梢器官が活動し、精液が精巣から後部尿道へ排出されます。このとき、精液の膀胱への逆流を防ぐために、尿道の上の方つまり膀胱側にある内尿道括約筋が収縮して、膀胱につながる尿道は閉じられます。同時に陰茎側にある外尿道括約筋も収縮して、前立腺内の尿道内圧を高めます。
この閉じられた区間の尿道には精管からの通路があり、精液がたまる部屋になっています。前立腺からも前立腺液がここで供給されます。
勃起したペニスが快感を集めるにしたがってクライマックスが近づいてきますが、このとき俗にいう「先走り液」が外括約筋の近くにあるカウパー腺から分泌されます。このカウパー腺液は陰茎の中の尿道を滑らかにするとともに、尿で酸性になった尿道をアルカリ性に変える役目をします。
精液が充満すると、尿道がはち切れそうに緊張します。この状態がいわゆる「イキそう!」という射精切迫感です。
尿道に非常に大きな内圧が加わり、ついに射精管閉鎖筋が抗しきれなくなって、外尿道括約筋だけが弛緩すると激しいケイレンとともに精液が勢いよく放出されます。これがいわゆる射精です。
勃起と射精と自律神経の働き
視覚や聴覚など五感の刺激が脳に伝わって、性中枢が指令を出し、勃起が起きます。さらに、脊髄の射精中枢が反応、筋肉などの動きによる反射で射精します。
勃起して射精するには副交感神経(勃起)と交感神経(射精)とからなる異なる2種類の自律神経のメカニズムが複雑に働いているわけです。
さらに、射精のプロセスはそれが支配する神経の違いによって、精管から射精管を通って尿道に至るまでと、尿道から体外に出るまでの2段階に分かれます。
射精時にはまず、精管の内の厚い平滑筋層が波打って精子を急速に尿道へと送り出します。これは交感神経のはたらきによります。一方、尿道から体外に出て行くのは、体性運動神経が支配する脊髄反射によるものです。